24.オーブン

バリエーション豊かな高級賃貸マンションの中には、「オーブン付き物件」というものがある。「オーブン付き」を必須条件にして物件探しをする方はあまり多くないと思うが、もし新居に付いていたら、思わずテンションが上がってしまう設備の１つではないだろうか。

人間がオーブンについて語るとき、しばしばガスと電気のどちらが良いかという議論がなされるようだが、どちらにもそれぞれのメリットがある。ガスオーブンは一般に火力が強く、予熱時間も短くて済むと言われている。対して電気オーブンは、温度調整がしやすくて多機能なのが魅力だ。

ガスにせよ電気にせよ、オーブン付き高級賃貸マンションの多くには、ビルトイン型のオーブンが設置されている。卓上型でも機能的には全く問題ない訳だが、料理好きの女性の中には、よりキッチンがスッキリとして、デザインの統一感があるビルトインに憧れを抱く人も多いようだ。

そしてビルトインに限らず、オーブンというのは、どこかしら優雅さや豪華さを感じさせる調理器具である。

電子レンジと比較してみるとよく判るだろう。レンジは、あたため、下ごしらえ、加熱調理とマルチに活躍し、今や生活必需品となっている家電だ。その一方、なぜか「レンジでチン」が“手抜き料理”と槍玉に上げられることも多い。あまりに手軽だからだろうか。

しかしなぜか、「オーブンでこんがり」だと手抜きと言われないのである。ローストビーフ、スペアリブ、新鮮野菜のグリル……シンプルに焼くだけの簡単メニューでも、豪華で手が込んでいるように見える。ゲストが来た時のご馳走にもピッタリだ。ル・クルーゼ、STAUBといったオシャレで機能的な鍋類との相性も良いので、よりメニューの華やかさを演出できる。これまではキャンプの時しか登場しなかったダッチオーブンも、出番が増えるかもしれない。

ふと思い出されるのは、アニメ『魔女の宅急便』で、品の良いご婦人が“ニシンとカボチャの包み焼き”を焼いているシーン。あのシーンではオーブンが重要な役割を果たした後、名台詞「私このパイ嫌いなのよね」が生まれる展開へと繋がっていくのである。ちなみに、実写版『魔女の宅急便』の方は未見なのだが、やはりあのシーンがあるのか、筆者は密かに気になっている。

それはともかく、オーブンという付加価値は、高級賃貸マンションに新たな彩りを添えてくれる。家庭的な温かさと、高級物件にふさわしい優雅でゆとりある時間だ。

オーブンとは、香ばしい香りと一緒に幸福のエッセンスをもたらしてくれる、まさにマジカルボックスなのである。