15.内廊下

以前のコラムでは、「オートロック」「玄関ダブルロック」と、「鍵」について取り上げてきた。鍵とはすなわち安全性の象徴であり、攻守で言えばいわゆる守り。鉄壁の守りを誇るからこそ、高級賃貸マンションが「高級」を名乗るにふさわしいという論理である。    

 では、はたして「高級の価値イコール安全」なのか、というとそうではないだろう。男がランボルギーニを乗り回したい、女がルブタンのハイヒールを履いて颯爽と歩きたい、と思うのは、決してそれらが安全性に優れ、自らの身を守ってくれるからという理由ではないはずだ。そこで今回のテーマは、高級賃貸マンションを高級たらしめる要素の一つとして「内廊下」を取り上げたい。 まずは、想像してみてほしい。—北風吹きすさぶ中、薄汚れたマンションの廊下を進んで、いつもの部屋を目指す。並んだ新聞受けからはみ出すチラシを横目に見ていると、足元にコンビニのビニール袋がからみつく。忌々しいな、と振りほどこうとしたら、思わず錆びた三輪車を蹴飛ばして舌打ちをする—。さて、その目指す部屋に待っているのは、一体どんな女だろう。化粧っ気がなく髪を引っつめにして、けだるい声で「帰るなら連絡くらいしてよ」なんて言うんじゃないだろうか。それに引き換え、こっちはどうだろう。—上品な木目がアクセントになった濃いブラウンの内装を、一番奥にある東向きの角部屋を目指し、真っ直ぐ進んでいく。都会の真ん中に居るというのに、足音を分厚いカーペットが消してくれるせいなのか、ここはいつも驚くほど静寂だ。雨が降る冷たい冬の日にもかかわらず、無意識にもうカシミアのマフラーを外していたのは、建物の中が暖かいせいなのか、この後逢う女の姿を思い浮かべて、密かに高揚しているからなのか—。 誤解のないように言っておきたいが、前者のシチュエーションで逢う女も、決して悪くない。いや、むしろ好きかもしれない。だが、この世に男として生まれたからには、何を目指し、どんな女を追い求めるのか。それは言わずもがなだろう。内廊下のメリットとは、風雨に晒されないことだとか、空調が利いているだとか、外から人に見られなくてプライバシーが守れるだとか言われているが、男には、そんな現実的な説明は要らない。

   なぜ昨今、高級タワーマンションが増え、その多くに内廊下が設けられているのか。それは、さながら高級ホテルのような内廊下が、目指す扉の先に待つものへの期待を膨らませてくれるから、ということに他ならない。

本物の男たるもの、瀟洒な内廊下のあるマンションに住み、人生のグレードを1つ上げたいものだ。Life must be luxury.

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