13.中庭

高級賃貸物件の象徴、そのひとつに「庭」がある。 一軒家であれば、自宅に「庭」があることは庶民の永遠の憧れであった。小坂明子の名曲『あなた』で歌われる「家」を考えてみよう。 大きな窓と小さなドア、暖炉があって、ブルーの絨毯が敷き詰められているという、「小さい」と言いながら明らかに高級住宅の外には、坊やが遊べるほどの庭もあるらしい。その横には「あなた」がいてほしいのに、いとしい「あなた」は今どこへ。そもそも小坂明子はどこへ……。 また、日本で描かれるセレブの象徴は、庭の池で錦鯉に餌をやっているシーンである。大方、そのセレブは日本の政治や裏社会を仕切っている人物で、鯉と戯れながら心臓の発作を起こし、帰らぬ人となってしまう。 同様のケースでいえば、名作『ゴッドファーザー』の中で、マーロン・ブランド演じるドン・ヴィト・コルレオーネは、自身の畑で孫と遊んでいる時に急死しているだけに、庭と畑の違いこそあれ、「家」といえば発想的には世界各国共通したものがあるようだ。 ところが、都心に一軒家を購入したとしても、庭のスペースまであるかどうかは難しいところ。対して通常のマンションでも、普通に考えたら庭がある部屋は少ないだろう。強いて言えば、一階の部屋にのみ庭がついている程度が関の山である。 しかしながら高級賃貸物件には、建物自体に庭――中庭が設置されていることが多い。ひとつだけならまだしも、大小様々な庭がいくつもあったり、「滝の庭」「桜の庭」など趣向を凝らした別種の庭があったりと、もはや「庭園」と呼べるレベルのものが存在する。 究極は「空中庭園」――ここまで来ればもう神話の世界。男なら、そんな物語の主人公になってみたくはないだろうか。 と、考えてみたら、なぜ庭園なのだろうか。セレブであることを示したいなら、庭園にお金をかけるよりは入口を超豪華な門にしたりと、外観にこだわったほうがいいように思える。なのに、多くの高級賃貸は、入口は意外とスッキリしている物件がほとんどだ。 心理学的に見れば、緑は見るだけで心や身体の疲れを癒す、リラックス効果があると言われている。また、太陽の光により光合成をしたり、様々な栄養素を吸収しながら育つ樹木から「生命の色」というイメージを受けることから、カラーセラピーによく使われる色なのだ。考えてみれば、日本社会を取り仕切っている人間も、それだけ神経をすり減らしながら生きているのだろう。企業戦士も同じだ。この大不況下でノルマも厳しくなる中、疲れて帰ってきたところに庭園があり、そこで我が子が遊んでいたら、それだけで幸せに違いない。

 

中庭、庭園、それは戦う男の心のオアシスである。

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