大田区にすむって

前回は東京の埋め立て地の代表的な存在として、江東区について考えてみたが、東京23区には江東区以上の埋め立て地が存在する。

東京湾の埋め立てによって区域が拡大されてきた大田区は、いまや世田谷区を追い抜き、23区で最も大きな区域を誇るまでになった。

区の経済としては都心から離れているものの、大田区にもまだまだ少ないながら高級賃貸物件が存在する。大田区内に設立された東京国際空港=羽田空港は、現政府が国際ハブ空港としての競争力強化が謳われているだけに、今後注目が集まるは予想に難くない。高級賃貸物件を希望する場合は注意しておいたほうがいい地域といえるだろう。

そこで、あえて結論から言う。大田区といえば蒲田である。行政も商業も、ほぼ蒲田に集中していることが、同区最大の特徴である。お隣の駅・大森にも商業施設は多数あるが、それでも蒲田が中心地であることに変わりない。

蒲田といえば、駅で流れる「蒲田行進曲」が最も有名だろうと思う。みなさんは第6回日本アカデミー賞で作品賞を獲得した名作『蒲田行進曲』は、原作の設定はかつての二大映画会社、松竹の蒲田撮影所であったにも関わらず、なぜか撮影は松竹のライバル東映の京都撮影所で行なわれた。

ストーリー自体も、銀幕のスター銀ちゃんが、自身の子を身ごもった女優・小夏を出世のために大部屋俳優のヤスに押しつけるところから始まる。それでもヤスは愛する小夏とお腹の子供、それ以上になぜか大好きな銀ちゃんのために、ハイリスクすぎる「池田屋の階段落ち」に挑むというという内容だ。

挙句、松竹撮影所のお話を東映出身の故・深作欣二監督に撮影されたことに怒り、松竹の故・野村芳太郎が同じく松竹撮影所を舞台とした「キネマの天地」を制作する。同作のために、松竹のドル箱作品であった「男はつらいよ」もこの年はお休みになったほど。

こんなねじれ現象、なかなか思い当たらない。偶然にも羽田空港と成田空港の話は、ある意味ねじれ現象ともいえるが、この件は語るとあまりに深くなりすぎるので割愛する。

話を戻すと、『蒲田行進曲』最大の見せ場は、ヤスが挑む「池田屋の階段落ち」だ。巨大な階段を落ち、傷だらけになりながら再び踊り場にいる自分のところへ這い上がってこようとするヤスに対し、銀ちゃんは涙ながらにアドリブのセリフを叫ぶ。

「ヤス、上がってこい。おまえは志半ばに倒れた勤王の志士だ。這ってこい、ここまで!」

ヤスは、「銀ちゃん、かっこいい……」と言いながら再び階段を落ちていった。

そんな男たちの壮絶なプライドが乗り移ったかのごとく、大田区は拡大し、今後もさらなる発展を遂げていくことだろう。

 

埋め立て地・大田区、そして蒲田。それは男の心をも埋め立ててくれるロマンである。

ご自宅の賃貸募集を検討中のオーナーさまへ

Livedoor news
当社モダンスタンダードの記事が、
Livedoor newsで配信されました。
Excite news
当社モダンスタンダードの記事が、
Excite newsで配信されました。

follow us in feedly